本郷どうぶつ病院

猫の病気

1. 飼い方/健康管理

2. 猫の病気

1. 飼い方/健康管理

これから猫と暮らそうとしている方へ

猫との暮らしは、生活に潤いを与えてくれて、とても楽しいものです。しかし同時に「一つの生命の運命を握る」という責任も発生します。
猫と暮らすには、最低でも以下のようなことが必要です。
・適切な食事管理
・猫が快適に生活できる環境の整備
・病気の予防や治療
・周囲に迷惑をかけない社会的責任

これらのことをきちんと行うには、手間とお金がかかります。気軽に旅行も出来なくなります。 また小さいうちはちいさくてかわいらしい子猫でも、すぐに大きく成長します。最初のうちは家具を傷つけられたり、手をひっかかれたりすることもあるかもしれません。そして猫は交尾排卵といって、交尾の刺激により排卵が起こるため妊娠しやすく、去勢や避妊をしていないと、どんどん子猫が増えてしまいます。 当然、一度飼い始めると、放棄することはできません。

いい加減で無計画な気持ちで飼い始めたり、増やしてしまったために、捨てられたり処分される不幸な動物たちがまだ多くいます。責任を持ってしっかり飼えるかどうか、もう一度よく考えてから決めましょう。

動物たちに愛情と責任を持って接すれば、かならずそれ以上の喜びが返ってきます。私たち獣医師・看護士は、動物とのより豊かな生活のお手伝いと、動物があなたと生活できて幸せだと感じられるような関係作りのサポートができればと考えています。

お外で飼うか、おうちで飼うか

これからネコを飼おう、または現在飼っている人がまず考えなければいけない、ネコの生活環境を左右する大きな分岐点です。この選択によりネコの一生はかなり変わります。 結論から申し上げますと、当院では完全屋内飼育をオススメします。以下に私の考える屋内と屋外のメリットとデメリットを挙げます。

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屋内飼育 食事管理がしやすい
健康管理・看病がしやすい
人に慣れやすい
ナワバリ意識からの解放(=ネコのストレス軽減)
他人に迷惑をかけない
いろいろな仕草が観察できて面白い
トイレトレーニングが必要
戸締り必要
閉じ込めているみたい?
多頭飼育には無理がある
屋外飼育 自由に見える(束縛されない)
しつけが不要
交通事故の危険
伝染病、寄生虫の感染
ケンカによるケガ
健康管理がむずかしい
看病がしにくい、できない
人に慣れにくい
ナワバリを守るストレス増加
他人に迷惑をかけることがある(飼主と猫の対人関係の悪化)

健康管理のしやすさ

屋内飼育では、食事や排泄の状態を確認できますので、日々の体調変化に気がつきやすくなります。そのため病気の早期発見、早期治療が可能となり、もちろん医療費も早期治療のほうが負担が少なくすみます。屋外飼育では必ずしも見える場所だけで食事や排泄しているとは限りませんので、状態を把握しづらく、末期になって初めて病気に気がつくということも少なくありません。病気の末期では様々な検査や治療を行っても、治らない病気もあります。

外に出られないのはストレスか

よく「外に出れないのはストレスだ」と言う人もいますが、自由に外に出るということは、他のネコとの社会関係も成り立たせなければならないので(つまりナワバリ争い)、このストレスもかかりますし、ケンカによるケガ、それにともなう病気の伝染(ネコのエイズなど)の危険もあります。生きていくには、まったくストレス無しというのは不可能ですので(人間もそうですよね)、どうせなら生命の危険の少ないストレスのほうが良いのではないでしょうか。
また、完全室内飼育であれば、そのお家の中がナワバリとなるので、ナワバリの外(つまり屋外)には興味がほとんどなくなることが多いものです。ですから一定期間外出できないストレスを我慢してもらえば、ストレスからはある程度解放されます。ただし、1週間、いや1ヶ月に1回でも自由に外に出させてしまうと、外もナワバリになってしまうので、完全に室内にいさせて下さい。

「猫害」をなくすために

昨今問題となっている、「ネコ害」も屋内飼育で解決できます。あなたにとってはかわいいネコちゃんでも、他の人からすると庭に排泄する「迷惑者」だったり、かわいがっている池のコイや鳥を食い殺す「殺し屋」だったりするのです。他人に迷惑をかけ、ネコに恨みを持つ人が出てくると、動物虐待につながるかもしれません。動物を飼っている以上、飼っていない人に対するマナーを守るべきという点からも、屋内飼育にすべきだと思います。

本当の自由

「動物は自由がいいんだ」という方もいらっしゃいます。そのとおりだと思います。ただ「動物を飼う」ということは、「動物の自由を奪う」ことでもあるということをよく考えていただきたいと思います。本当に動物の自由を尊重するのであれば、食事を含めて一切その動物の生活に介入してはいけません。野生動物と付き合う時の原則です。遠くから暖かい眼で見守ってあげることが大切です。ただし人為的なケガなどの場合には応急処置が必要かもしれません

外へ出すという覚悟

どうしても外へ出して飼うという方は、次のことを覚悟すべきです。
・伝染病、ケガは避けられない
・交通事故で死んでしまうことがある (ネコは交通ルールが分からないし、守れない)
・他人への迷惑は、知らん振りはせず、きちんと責任を取る
「外に出なければこんなことには...」という猫達をたくさん見てきた私達としては、屋内飼育を強くオススメします。せっかくあなたと出会えたのですから、おうちの中であなたと安らかな生活をさせてあげてください。

猫をおうちに迎えたら

環境の変化に慣れさせる

猫をおうちに迎えたら、まずは環境に慣れさせる必要があります。特に子猫のうちは、環境の変化などによりストレスを感じると、病気なりやすくなります。新しく猫ちゃんが来ると、どうしてもすぐに遊んだりしたくなりますが、これもストレスになる可能性があります。
数日は一つの部屋にいさせて、慣れさせましょう。しばらくすると、徐々に行動範囲が広がっていくと思います。少しずつ、おうちに慣れさせましょう。

シャンプーやトイレのしつけ

あまり汚れているのでなければ、少しの間シャンプーなども控えたほうがいいと思います。トイレのしつけは始めても良いと思いますが、失敗したからといって叱ってはいけません。

ワクチンや体調の変化

体調が変だなと思ったら、動物病院へ連絡しましょう。
ワクチンを接種していなかったり、子猫で2回目の接種から2週間たっていないような場合には、伝染病に感染する危険がありますので、外出はもちろん、他の猫との接触は避けてください。 (子猫の社会化には他の猫と接して欲しいのですが...病気と社会化のどちらを取るかは難しい問題です。)

猫のごはんのあげ方

年齢に合わせたごはんを選ぶ

猫も年齢によって、必要とする栄養素が異なります。成長期には栄養価の高い成長期用のごはん、高齢であれば体に負担の少ない高齢用ごはん、また腎臓などに異常がある場合にはそれらの病気に合わせたごはんを与える必要があります。

「だらだら食い」はおすすめしません

よく、1日中ごはんをお皿の中に入れ、いつでも食べられるようにしている方がいます。この方法では、以下のようなマイナス面があります。
・1日の食事量が把握できない → 異常を見逃しやすい
・お腹が休む時間がないので、胃腸に負担がかかる
・結石ができやすくなる
1日の2~5回と決めて、「与えられたらすぐ食べる」、「食べなければすぐに片付ける」という習慣をつけましょう。

好き嫌いをなくすには

子猫のうちに、いろいろなものを食べさせてください。この時期に特定の物を食べさせていると、将来もそれしか食べなくなってしまいます。ウェットフード(缶・パウチ)、ドライフード、肉や魚をゆでたものなど、バランス良く与えましょう。成猫になってから好き嫌いをなくすのはとても難しいです。

ドライフードか、缶詰か

猫はもともとあまりお水を飲みません。そこでドライフードだけを食べると更に水分が不足しがちとなります。ドライフードは保存性や、ゴミが少ないなど、猫ではなく人間にとってのメリットがありますので、必要に応じて使用しても構いません。

個人的には缶詰やパウチなどのウェットフードをおすすめしています。食事と一緒に水分をとることで、水分不足を防ぐことができます。また口内の水分もドライフードに比べて乾きにくくなるため、歯垢が残りにくく、歯石や歯周病になりにくくなると考えられます。

半生フードはすすめられません。これは、プロピレングリコールやグリセリンといった化学物質に水分を保持させて、半生の食感を作っています。これらの化学物質は生物に対する毒性は低いものですが、強力な保水力を持っているため、体内に入っても半生フードに含まれている水分は体内で利用できないと考えられます。濃度によっては利尿作用が見られ、逆に脱水傾向になるかもしれません。

猫の多頭飼育とストレス

猫を2匹以上飼う場合、単独飼育に比べると、いろいろ気をつけなければいけません。獣医行動学の分野では、多頭飼育の場合、問題行動の発生が多いとの報告もあります。 もともと群れという単位で生活する動物ではないため、いろいろなストレスを感じ易いようです。次のことに注意して、ストレスを減らしてあげましょう。

トイレの数は、猫の数の2倍必要

猫はとてもきれい好きなので、汚れたトイレでは我慢してしまいます。 人間だってトイレが汚ければ気持ちよく用を足せませんし、あまりにも汚ければ我慢するか他のトイレを探すでしょう。ウンチやおしっこを我慢することは、様々な病気の原因になります。

安心できる場所をつくってあげる

猫によって、安心する場所は違うようです。(高い所、狭い所など)キャットタワーなどを用意して、それぞれの場所を作ってあげましょう。

健康管理をきちんと

だれがご飯を食べていないのか、下痢をしているのはどの子なのか、 などがはっきりしないと病気の早期発見ができません。日常の観察をきちんとしてあげましょう。

適正な飼育頭数を考えましょう

単位面積あたりの頭数が増えれば増えるほど、猫のストレスは増加すると言われています。また、無制限に増えてしまうと、食費や医療費が多くかかり、飼主さんの負担が大きくなっていきます。 健康管理が不十分な状態で飼育されている猫は、幸せとは言えません。どのぐらいの頭数なら自分で管理できるか、十分に検討しましょう。
また、避妊去勢を実施し、バースコントロール(繁殖コントロール)をしましょう。 繁殖に関わるストレスから猫を解放してあげてください。