ステロイド -副作用が怖い?-

ステロイドの特徴

  • 有効率 :ほぼ100%
  • 効果発現:早い
  • 副作用 :あり
  • 費用  :安価

ステロイドとは

アトピー性皮膚炎で使用されるステロイドとは、本来「コルチコステロイド」と言います。もともとは身体の副腎という臓器の一部から産生されるホルモンです。このホルモンは、炎症を抑える、免疫を抑えるなどの作用があるため、治療薬として使用されます。コルチコステロイドの中にもいくつか種類がありますが、一般的にはプレドニゾロンが多く使用されます。


ステロイドは悪者か

「知人にステロイドは怖いよって聞いた」というお話を聞くことがあります。ではいったい何が怖いのか?、ステロイドを与えると死んでしまうのか?きちんと理解している人は意外に少ないと思います。ちなみに運動選手の筋肉増強剤(ドーピング)などで知られるステロイドとは「アナボリックステロイド」で、薬で使用するステロイドとはまったく違いますし、アナボリックステロイドの方が遥かに副作用が強いです。

ステロイドには副作用があります。一方、ステロイドにより救われる患者さんもたくさんいます。使う理由と必要性があれば使うべきですし、無理解のうちにすべてのステロイドを否定し、かえって動物を苦しめてしまうのは、本末転倒だと思います。

副作用のある薬であることは間違いありませんので、やたらに使ったり、漫然と使用してはいけません。またステロイドが効いても、症状を抑えているだけにすぎず、治ったわけではありません。症状と相談しながら使用する、いわゆる「さじ加減」がとても重要な薬なのです。


ステロイドの影響・副作用をきちんと知っていますか?

ステロイドの体に対する影響は、短期間のうちに見られるものと、長期間投与した場合に現れる症状があります。また投与量や個体差によって影響される症状もあります。以下に主な症状を挙げます。(太字は特に注意すべき影響です)

    (短期間・必ずみられる症状で短期間なら心配ない)
  • 食欲が増す
  • 水をよく飲む
  • おしっこの量が増える

    (短期間・投与量や個体差によりみられることのある症状)
  • 胃腸障害(嘔吐、下痢)
  • 感染症(傷が化膿しやすいなど)

    (長期間・これらの症状があらわれていればステロイドの減量や休止を検討する)
  • 肥満
  • 筋肉の低下
  • 皮膚が薄くなる
  • 胃・十二指腸潰瘍
  • 肝障害
  • 副腎の機能低下(医原性クッシング症候群)
  • 糖尿病 (糖尿病の原因のすべてがステロイドではありません。他の多くの要因(遺伝的要因等)も糖尿病の発症にかかわることがあります。)

    (急に投薬を休止した場合)
  • アジソン病(最悪の場合、命を落とします。これを防ぐために、ステロイドを中止するときは徐々に投与量を減らしていく必要があります。素人判断で勝手にステロイドを止めてしまうのはとても危険です。)


なぜステロイドを使うのか

ステロイドの良い点を挙げます。

  • 効果が早い
  • ほぼ間違いなく効く
  • 安価

動物の皮膚病の場合、皮膚が毛に覆われているため外用薬を使うことが困難です。舐め取ってしまうという問題もあります。そこで内用薬や注射薬を主体とした治療を組み立てていきます。ただ、内用薬で即効性があり、ほとんどすべての動物に効果が期待できる薬は今のところステロイド以外にありません。また他の薬も単独で使用するのではなく、ステロイドを併用した方が効果的な場合が多いです。

さらに犬と猫は、人よりもステロイドの影響が出にくいと言われています。ただ大型犬は影響が出やすいようです。


当院が考えるステロイドを使う場合と使わない方が良い場合

まず、ステロイドを使用すべき場合を考えましょう。

  • 使う理由が明確 (診断が確定している → その病気の治療の第一選択がステロイドの場合)
  • ステロイドを使わないと、その動物のQOL(※)が著しく損なわれる場合
  • 他に効果のある薬剤がない場合

次に、避けた方が良い場合です。

  • ステロイドを使用しなくても動物のQOLが損なわれていない場合
  • 他に効果のある薬剤がある場合
  • ステロイドの副作用がでている場合
  • ステロイドにより悪化する状態がある場合

(※QOL = Quality of Life、生活の質。Wikipedia「クオリティ・オブ・ライフ」参照。)

ステロイドの投与に疑問や不安がある場合は、必ずかかりつけの獣医師とよく相談し、非科学的な情報に惑わされないようにしましょう。


(参考文献)
Donald C. Plumb Pharm.D.(2011) : Plumb′s Veterinary Drug Handbook, 6th ed, Brackwell.
Richard W. Nelson , C. Guillermo Couto (2013) : Small Animal Internal Medicine , 5th ed, Mosby.
Miller,W.H., Griffin,C.E., Campbell,K.L.(2012) : Small Animal Dermatology, 7th ed, W.B.Saunders.
Robert L. Bill(監訳:浅野 隆司)(2001) : 獣医臨床 薬理学指針, インターズー