本郷どうぶつ病院

予防医学Preventive medicine

ワクチン

 ワクチンとは、病気にまったくかからなくするものではなく、体内に入った病原体に対して、体がすばやく撃退できるようにする注射です。 つまり、ワクチンを接種すると、その病気になったとしても軽症で済み、命を落とすことが防げるというものです。

 現在は、複数のワクチンがミックスされている「混合ワクチン」が主に用いられています。 感染力が強く、命を落とす危険のある病気に対する「コア・ワクチン」と、生活環境により接種するかどうかを決める「ノンコア・ワクチン」とがあります。一般に犬5種・猫3種混合はコア・ワクチン、犬7種・犬8種・猫5種などはコアとノンコアが混合したワクチンです。コア・ワクチン以外の接種に関しては、飼主様と愛犬の生活圏における病気の発生・蔓延状況により決める必要があります。かかりつけの獣医師にご相談ください。

ワクチン接種のタイミング

 接種のタイミングはワクチンの種類、年齢、生活環境、体質により異なります。当院では科学的データを根拠に作成された最新のガイドライン(WSAVAおよびAAHA)に基づき、接種方法を決めています。下記の接種方法は絶対的なルールではなく、新たな科学的情報により変わる可能性があります。

接種するタイミングの例
狂犬病ワクチン(犬のコアワクチン):1年に1回接種(法的義務)
子犬・子猫のコアワクチン:6~8週齢で初回 → 16週齢を超えるまで:2~4週毎 → 26週齢
成犬のコアワクチン:抗体検査(血液でワクチンの効果を判定する検査)の結果に基づき接種(通常は3年間以上の間隔)
家庭内の成猫のコアワクチン:通常は3年間は間隔をあけて接種
屋外に出かける成猫のコアワクチン:1年に1回接種
成犬のレプトスピラ(ノンコアワクチン):6ヶ月~1年に1回接種
猫の白血病ウイルス(ノンコアワクチン):8週齢以降で初回 → 4週後 → 1年後 → 終了
猫の免疫不全ウイルス(ノンコアワクチン):8 週齢以降で初回接種 → 2~3週後 → 2~3週後 → 1年毎

フィラリア

 フィラリアとは、蚊に刺されることによって伝染する寄生虫です。親虫は白く細長く、主に心臓に寄生します。心臓に「そうめん」が詰まったようになるため、心臓の働きを邪魔し、様々な症状を引き起こします。

 治療は「薬で心臓の親虫を殺す」「手術で心臓の親虫を摘出する」がありますが、どちらも副作用や危険をともなう処置となります。よって、かからないように予防することが重要です。

フィラリアの予防

 現在は月1回の投与による予防がメインです。投与時期は以下の条件をもとに決めています。地域の平均気温により、投与時期は異なります。かかりつけの獣医師の指示に従い、予防期間中は忘れずに投与してください。

POINT① ある程度気温が高くないと、蚊の中にいる子虫は犬に感染できない
フィラリアは血液の中に子虫を生みますが、この子虫は犬の体内では成虫になれず、蚊の体内だけでしか成長できません。蚊がフィラリア感染犬を吸血したときに一緒に蚊のお腹に入ります。やがて、蚊の体内で犬に寄生できる幼虫に成長するのですが、ある程度気温が高くないと成長できないのです。 これらのことより、感染する危険のある蚊が飛んでいる時期を決定し、これを「フィラリアの感染期間」といいます。
POINT② 体内で成長した幼虫に対して、予防薬の効果が出る
幼虫は、蚊が刺したときにできる皮膚の傷に落ちて感染します(直接血管には入りません!)。この幼虫は皮膚~筋肉を通りながら成長を続け、やがて血管内に入ります。 現在の一般的な予防薬は、感染後1~2ヶ月程度成長した筋肉内の幼虫に効果を発揮します。よって、刺された直後に予防薬を与えても、まだ効果の出る幼虫に成長していないので、効果がありません。

ノミとマダニ

 ノミとマダニも吸血することにより、犬猫に健康被害を与えます。1回の投与で予防効果が1ヶ月持続する薬、3か月持続する薬があります。長野市では3月~12月頃までが予防が必要な期間です。

マダニ
草むらなどに潜んで、散歩中に体に寄生します。
刺されても痛みや痒みはなく、気づきません。
人にも寄生します。
数日間、マダニは口を皮膚に差し込みぶらさがりながら吸血します。
吸血の間に様々な感染症を伝染させます。近年はSFTS(重症熱性血小板減少症候群)による人の死亡例も増え続けています。
ノミ
ノミの成虫は体に寄生し、吸血しています。
ノミの幼虫は地面やじゅうたんなどの環境中に生活しています。
さされると激しい痒みのほか、アレルギー性皮膚炎を起こすことがあります。
病原体やお腹の寄生虫(瓜実条虫)を伝染させます。